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はるのかぜ

第24章 ハルの失敗

その日の夕方、ハルが帰宅すると母親の弥生が晩御飯の用意をしていました。仮入学の説明の時、携帯電話の持ち込みが発覚した場合は没収の上、保護者が取りに行くというルールを聞いていたので、ハルは弱々しく報告します。

「今日、携帯電話没収されました…。」

「えっ?没収?あれだけ気をつけなさいって言ってたのになんでよ!また、どうせ余計なところで電源入れたんでしょ!本当にバカなんだから!」

「ごめんなさい。」

「連絡来たら、学校に取りに行かないとね。」

没収されたというだけでショックだったハルですが、弥生の一言でさらに落ち込みました。

次の日、心はブルーなままハルは登校しました。朝のホームルームが終わった直後のことでした。国分先生がハルの元にやって来て言いました。

「内海。今日の放課後私の所に来てもらえるかな?」

「わかりました。」

ハルは内心ドキドキしていました。状況からして、昨日の携帯電話没収に関してのお話であることはわかっていましたが、今度は何を怒られるのだろうと不安になっていたのです。

放課後、約束通りハルは職員室へ向かいました。国分先生はハルを職員室横の小さな部屋に案内しました。

「今日呼んだのは、もちろん携帯電話の件だ。」

「はい。」

「昨日、没収した携帯電話なんだけど、今日、お前に返すことにした。」

「えっ!」

「理由はなんだけど、内海のこと、1年の時から見てきたけど、いつも真面目に学校生活を送ってることを私はよく知ってる。だから、携帯電話の持ち込みも悪気があってのことではないと思ってね。」

「ありがとうございます。」

「ただ、一つだけ約束だ。こうして今日、私が携帯電話を返したことは他の先生や友達には内緒だぞ。」

「わかりました。」

ハルが答えると国分先生はポケットからハルの携帯電話を取り出し、渡しました。

「電源、ちゃんと切っておくんだぞ!」

そう言って国分先生は去っていきました。ハルは職員室へ戻る国分先生の背中をしばらく眺めていました。また一人、素敵な先生を見つけたなと思った瞬間でした。そして、ハルは国分先生との約束通り、このやり取りを永遠に秘密にし続けることでしょう。

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