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はるのかぜ

第33章 さらに深まる溝

進路のことで揉めて以来、ハルと弥生との間には再び会話がなくなりました。今日は学校で進路を決める大事な三者面談の予定ですが、ハルと弥生はろくな会話をすることなくその日を迎えました。

教室に並べられた机に、担任の長瀬珠子先生とハルと弥生は向かい合わせに座っていました。

「じゃあ、ハル、今後の進路はどうする予定かしら?」

長瀬先生が切り出すと、ハルは力のない声で答えました。

「私、もう夢も希望もありません。」

「えっ?」

ハルの発言に長瀬先生も驚きました。弥生が慌てて言います。

「ハル!…すみません。先日、ハルとちょっと喧嘩しまして。」

「喧嘩と言うか家庭の事情を一方的に押し付けられました。」

ハルも負けじと言い返します。

「ハル!一方的にって何よ。」

「我が家では、好きなことよりもとにかく家庭事情が優先だそうです。」

「そんなこと、言ってないでしょ。そりゃ確かに大学卒業して、仕事がなかった時は面倒見きれないとは言ったけど…。」

「それが家庭の事情って言ってるようなもんじゃない!」

「そう言う意味で言ったんじゃないわよ!」

「じゃあ、大学卒業後にちゃんと就職できてればいいんでしょ!」

「その就職のことを考えて大学は選ばなきゃダメだって言ってるのよ。大学に行くってことは学費もかかるのよ。お父さんも単身赴任してるし、おじいちゃんだって一人で暮らしてるから、そんなに遠くの大学なんて行かせてあげられないし。」

「だから、それが家庭の事情を押し付けてるって言ってるんでしょ。こんなこと言われたらお先真っ暗になって当然でしょ!」

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