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はるのかぜ

第3章 突然もぎ取られた楽しみ

塾に通い始めたハルは学校への行き来に加え、週3日間学校から帰っては塾へ行くという生活を送っていました。塾の授業は夜10時まであり、いつもハルの就寝時間は日付が変わる頃になっていました。でも、ハルはそれに苦痛を感じることはありませんでした。なぜならば、塾に通う時間はハルにとって楽しい時間だったからです。
しかし、そんな楽しい時間は長くは続きませんでした。

ある日、ハルの母の弥生は自身の父親、つまり、ハルにとっての祖父にあたる松原卓造のところへ向かっていました。ハルの祖母はハルが小学生の時に亡くなり、その後卓造は一人暮らしをしています。ハルの家庭は元々転勤族でしたが、ハルの父はこの事を気づかい単身赴任しています。そのため、弥生は度々卓造の元を訪れる日々を送っていました。その日、弥生が卓造の家を訪ねるとやけに自宅の中が薄暗いと感じました。弥生が奥に入っていくと、卓造が布団を敷いたまま横になっていました。

「お父さん、どうしたの?」

「夜中から腹が痛くて何も飲み食いできないんだ。」

弥生はすぐに近所の病院に卓造を連れていきました。医師は診察結果を卓造と弥生に告げました。

「脱腸が原因ですね。このまま放置していると、また同じような症状を繰り返すことになります。早いうちに手術をしたほうがいいと思います。対応できる病院を私から紹介します。」

思いがけない診察結果に弥生も困惑していました。

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