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愛はメロデイにのって

第1章 愛は、メロディにのって

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 幸い、なつみちゃんの指の骨は折れておらず、打撲傷と切り傷という診断でした。
 なつみちゃんのお母さんも、わたしに迷惑をかけましたと言い、話のわかる方でした。
 「滝川さん
  ありがとうございました」
 「いえ
  なつみちゃん
  骨が折れていなくて
  よかったですね」
 「はい
  わたしだけでしたら
  救急車を呼んでいたと思います
  ほんとに
  ありがとうございました」
 「先生
  私にお礼をしたいと思っているでしょう?」
 「はい
  もちろんです」
 「断るのもあれですから
  そのお礼がわりに
  食事に付き合ってください」
 「はい
  そんなことでいいのでしたら」
わたしは、なつみちゃんの怪我というアクシデントがなくても、望さんに親近感を持っていたので、食事は、わたしから誘いたいくらいでした。
 食事をするのが、それから何回か続きました。
 わたしたちは、
 「百合さん」
 「望さん」
 と、呼びあうようになりました。
 わたしは、父が和歌山で代々続いている材木商をしていること、わたしが東京の音楽大学を卒業したこと、東京でピアノ教室を開きたかったが、父が関西でなければ駄目だといったことなどを話しました。
 「それで
  大阪で」
 「はい」
 「よかった」
 「えっ」
 「そのおかげで
  百合さんと出会えた」
 「そうですね
  父に感謝しなきゃ」
 「百合さんは
  お嬢さまなんだ」
 「そんなことありません
  ちょっとだけ広く商売をしているだけですから」

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