Melty Life
第3章 春
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噂は、突然、消えた。
途端にクラスメイト達は、二日くらい前までいてもいないような態度をとっていたあかりに対して、まるでずっと親密だった調子で声をかけてくるようになった。誤解を丁重に詫びてきた生徒は数知れない。当分スケジュールに余裕のなかったはずのともかや玲も、休み時間など顔を出してくるようになった。
噂話は、根も葉もなかった。
あかりに片恋していた少女に求愛して玉砕した男子生徒が、逆恨みから淫らな醜聞を流したのではないかとか、やはり直接的な恨みが原因だったのではないかとか、噂に踊らされていた生徒達は、各々出どころを検証し合った。少なくとも彼らがあかりに申し訳なさを感じたのは、ありもしない話を鵜呑みにして、本人の株の暴落に貢献したところにある。
「ほんとごめん!いや、用事があったのは本当だよ。わたし達は元々、あかりの味方だったよ」
「そうそう。テニス部の先輩が、人使い荒くてさぁ」
眞雪と知香の物言いたげな眼差しが、あかりは見ていていたたまれなくなる。
昼休み、ゴールデンウィーク中でさえ一度も会わず、LINEも途絶えていたともかと玲は、何事もなかった顔で、知香を含めたあかりと眞雪の通いつけの中庭にいた。