Melty Life
第3章 春
噂話の消滅は、何者かが意図的に仕込んだのではと疑ぐるほど、速かった。あかりが竹邑の知られざる顔を垣間見てから、二日後には、全て元に戻っていた。竹邑が暗躍してくれたとは考え難いにしても、あの時、彼と話していなければ、こうして噂が消える前に、あかりが水和の前から消えていたかも知れない。
竹邑は、噂の真偽などどうでも良い、と言った。
個人の器量は、積み重ねてきた過去では測れない。特に幼ければ幼いほど、子供は生き方を選べない。水和は、正しい人間だけを選別するほど、視野の狭い女ではない。
素行の悪い上級生は、水和に関して、やけに知悉した口ぶりだった。タイミングの悪さから、下級生を泣かせてしまった後ろめたさが、口から出任せを言ったようにも思えなかった。
あかりは、自分が格好悪いと思ったことがなかった。自分の表層を称賛してきた少女達の感覚を疑うほど、あかりも疑心暗鬼になったことはない。
それでも、初めて、表面的な自己評価まで下落した。
よりによって、あんな男に気を遣わせた。
すぐに考え方を改めた。
あんな男、と自分が見下してきた上級生は、実は見た目ほど思い上がっているわけではないんじゃないか。