
Melty Life
第4章 崩壊
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見るからに善良な風貌の、実際その面倒見の良さはこの数分内で十分に立証された女性が遠ざかっていくのを見送ると、水和はスマートフォンを立ち上げた。
百伊からLINEが入っていた。文字の羅列は、千里より水和の方を案じていた。
クラスメイトで告白を受けた間柄と言っても、水和と千里の親密度はたかが知れている。千里に限らず、水和が気心知れた生徒はごく僅かだ。言い換えれば水和は、友人に心配されるほど、極度の引っ込み思案だ。
千里の両親は、想像通り厳格だった。
対して隼生はおおらかだった。学校で何度かすれ違った際、挨拶した時の印象にたがわず、さっきも言葉の節々に、水和に気を張らせまいとする配慮があった。
そのことを百伊への返信文に含めると、三十秒と経たない内に通知が届いた。軽快なクリエイタースタンプだ。ウサギのキャラクターが、「安心」「お疲れ様」というロゴを掲げている。
スマートフォンを鞄に仕舞って、手癖に任せて中を探った次の瞬間、背に嫌な汗が伝った。
あ。
定期券がない。
