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Melty Life

第5章 本音




「私も、来須くん……!!!」



 全校生徒が水和を振り向く。

 閉会したあとでも遅くないのに、溢れる思いが止まらない。



「来須くんが好きです!!!」



 驚く生徒達の隙間を縫って、水和は壇上に駆け上がる。



「花崎さん……っ」

「有り難う、有り難う……」


 
 抱き締めた来須の感触は、いつかの土曜、まだ肌寒かった夜風から包んでくれた彼の体温そのままだ。







 こうなることは、分かっていた。

 壇上で抱き合う上級生二人に、大多数の生徒達が拍手や歓声を送っていた。来須も水和も、これ以上は耐え忍べなかったと言わんばかりに、彼らの厚意に委ねている。


「…………っ、……」

「宮瀬さん!」


 隣にいたクラスメイトが、くずおれたあかりを咄嗟に支えた。


「ありがと。……立ち眩み」

「ああ、普通ならもう一限目始まってるくらいだもんね」

「大丈夫?私も、こうずっと立ちっぱなしだと……」


 反対側に直立していたクラスメイトも、あかり達に苦笑を向けてきた。

 彼女達は、あかりが水和に告白したこと、それから今日までの経緯を知らない。


 風化してしまえば良い。力が抜けたのは、きっと安堵したからだ。水和に必要なのは来須だ。


 もう水和を求めなくて済む。この胸の痛みだけで、彼女を感じていられるから。

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