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Melty Life

第2章 初デート


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 両親があかりに優しかった記憶は、ほとんどない。
 幼かった時分は一日一食が当たり前も同然だったし、真冬に風呂が冷水だったこともあれば、小学生の頃は体育の着替えが始まると、幼心ながらに身体の傷が疚しくて、一人で空き教室へ逃げていた。

 高校受験を控えると、早い内から教え込まれていた家事に手が回らなくなっていたのもあって、特に母親の癇癪はピークだったったのではなかったか。

 同級生達が皆、勉強の妨げになるものを遠ざけようとする親達に不平を垂らしていた中で、あかりだけが逆だった。テスト前でも妹の身の周りの面倒を見ていたし、ともすれば一日中家にいる母親以上に家族の世話をこなしていた。それらにおいても何かにつけて抜け目があると、両親はあかりに手を上げた。


 受験本番まで残すところ一ヶ月ほどになったあの夜も、発端は些細だった。

 咲穂が落ち込んだ様子で学校から帰ってから、部屋に塞ぎ込んでいた。父親は彼女の部屋の前でそわそわしながら呼びかけて、母親は急いで次女の好きな店へケーキを買いに走ったが、その扉が開かれることはなかった。
 あとに聞いた話によれば、咲穂は、教師に少し強く言われたことがあったらしい。感じやすい、特にぬくぬくと育った類の十四歳の少女からすれば、血縁もない中年男の怒声は、仮に相手が正しかったとしても、ショックが大きいのだろう。

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