Melty Life
第2章 初デート
両親は、物が喉を通らないのを理由に食卓にも顔を出さない愛娘に、痺れを切らせた。
…──お前の元気がなくなれば良かったんだ!何故、俺の可愛い娘が苦しんで、お前がのうのうとしていられる!
…──あかりはお姉ちゃんなのに、どうしてあの子の悩みに気づいてあげられなかったの。
両親の主張は滅茶苦茶だった。
しかし幼少期から、育てなければ良かっただの咲穂しかいらなかっただの聞かされてきたあかりにしてみれば、あの時も、特に言葉は浮かばなかった。作業的に謝罪を繰り返していた。
両親は、風呂から出たばかりのあかりに脱衣を命じた。思春期特有の成長の兆しの見えかけていた少女の肉体は、下着をつけることも禁じられて、憎悪で目を赤くした女と男の目に晒された。
お前が苦しめば、咲穂は悪魔に許してもらえる。父親はどこからか持ち出してきたロープであかりの両手首をカーテンレールに縛りつけた。母親がスリッパを振り上げて、尻や背中を強打し出した。
バシバシと容赦ない音が、真冬の深夜の静寂を割いていた。自分の皮膚から打ち鳴らされている気がしなかった。昔の雨乞いもこんな感じだったのかな、と、理不尽な責苦を強いられている自分自身を、あかりは心のどこかで傍観していたのを覚えている。