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銀河巡礼

第10章  八の月




潮の匂いが
記憶を揺り起こしたものか
遠い思い出が目をさます


手をひかれ おそるおそる踏み入れた
足をくすぐる波とさらわれる砂の感触
真夏の太陽を弾き煌めく水面


少しずつ沖へ向かい
肩まで海に抱かれた時の不思議な高揚は
今も胸を騒がせる



時は過ぎ
ひとり 岬に立ちながら
髪をとく風にあの日の声を探している






(了)


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