隣のアイドル
第4章 *Episode3
「……そう。」
ここまできたらもう隠せない。
「名前は?」
「柚の花って書いて…ユズハ。」
「いい名前だ……」
柚花が走って行った先の人影はやはり蒼井さんだったらしく、楽しそうに話してるのが見てわかる。
「元気な姿を一目でも見られて良かった。」
「………」
なんだろう……
そんな優しい言葉を言われたら、今まで会わせたくないと言ってた私が悪者みたい……。
柚花は亮平さんの子供
柚花にとって唯一の父親
会わせないのは、罪なことなの……?
「ママ?」
「!?」
突然の柚花の声に我にかえる。
「こんばんは」
「こ、こんばんは…!」
さすが芸能人
この間の気まずさなんてこれっぽっちも感じさせない自然な対応に私の方が動揺してる。
「ねえ、ママ、
この人だーれ?」
「え、あっ…お友達!」
亮平さんを指差す柚花を不思議そうに見つめる蒼井さん。
この異様な空気の中から今すぐにでも脱したい……!!
「柚花ちゃん、こんばんは。」
「……おじさん、
ママのお友達なの?」
「そうだよ。
同じ病院で働いてるんだ。」
「お医者さんなの?」
「そうだよ。」
「すっごーい!
お医者さんは何でも治せるんだよね!」
一気に警戒心が解けたのか、満面の笑みを見せた柚花。
何も言えずに、ただ柚花と亮平さんを見守るしかなかった。
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