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隣のアイドル

第4章 *Episode3





「え、っと……」







簡単に見破られた嘘



正直に話す?

それとも、また新たに嘘を重ねる?







「柚花の父親は……」







過去を全て話したところで蒼井さんとの関係は何も変わらない。



きっと軽蔑されるだけー……



前にも後にも進まない。







体の向きを前にして座り直すと、一度深呼吸して俯き加減で話し始めた。







「柚花の父親は、妻子ある人だったんです。
それが鍛冶さんでした。」







軽蔑されようが、
嫌われようが、どうでもよかった。



これ以上、嘘をつくことが苦しかった。







「私が悪かったんです……
今思えば本当にバカだったんです……」


「………」







美咲は膝の上に乗せた手を強く握り、震える声で続けた。








「柚花を産んだことに後悔はありません。
1人で育てていくことに迷いもありません。
ただ、鍛冶さんは離婚されたみたいで、今になって柚花の父親だと名乗るのだけは避けてほしいんです。」







「ふぅー」と小さく息を吐くと、ゆっくり顔を上げた。







「これが、私の本当の過去です。」







少し遠くでしゃがみこんで、つくねと芝生を突っつく柚花を見つめた。


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