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ぼっち─選択はあなたに─

第7章 ソルトの町(2回目)【選択4】

「そうだ、お代っ……」
「餃子はあたしからのサービスよ。お客さん、気を付けて帰ってね。もしシャドーに会ってどうしようもなくなったらこれを投げて。絶対に死んじゃだめ。これはユッキーメからのお願いよ」

 そう言うと、女性店員ユッキーメは一本のダーツの矢をヒカルに手渡した。

「ありがとうございました~!」

 ヒカルは呆然としながらも、ペコッと頭を下げる。

(なんだろう、一瞬店員さんの雰囲気がガラッと変わったような……それにこのダーツの矢、なんだか先っぽに赤い液体が入ってるけど……)

「ちょっと、ヒカル!? 何してるの、早くして!」
「は、はぁいっ」

 なんとなくレイナも気が立っている。
 店の外に出ると、すでに辺りは暗くなりかけていた。町の灯りがポツポツとついてはいるが、ぼんやりとして頼りない。

「いい? ヒカル。何が聞こえても振り向いちゃダメよ。まっすぐ前を見て私についてきて」

 ヒカルは無言で頷く。
 只ならぬ雰囲気と不安を身に纏いながら、レイナの背中を見つめた。周りに人はまばらにいたが、みんな無言で足早に帰路についていた。

「え~ん、え~ん」

 その時どこからか子供の泣き声が聞こえてきた。最初は猫かと思ったが、だんだん声のする方向に近づくと、それはハッキリと聞こえてきた。

「レイナ! 子供が泣いてる!」
「……」
「レイナ!? 子供の声がっ……」
「言ったでしょ? 黙ってついてきて!」
「……っ……」

(そんなっ……本当に子供が泣いてるかもしれないのに、確かめもしないで見捨てるの?)

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