テキストサイズ

ぼっち─選択はあなたに─

第28章 魂の世界

(……ヒカリ?)

 なんとなく女性は自分の母親だろうと思った。
 しかし顔を見たくないのか、視界は口元までしか写らない。

「どうしたの、ヒカリ。泣いていたの?」

 母親が自分の前で屈む。
 とっさに母親の目が見えて、ヒカルは母親を突き飛ばした。

「私はヒカリじゃない!!」

 思わず出た言葉にヒカル自身もびっくりする。

(そうだ……私は"ヒカリ"じゃない!)

 それを母親にわかってほしくて、いつも母親に訴えてた。
 しかし母親はクスッと笑う。

「まだ妹のヒカルが死んだことを受け入れられないのね……」
「!?」
「あなたの双子の妹は交通事故にあって死んだの……父親と一緒にね」
「!?」

(私が……お父さんと事故にあって死んだ!?)

 全く記憶にない。
 双子だったというのも初耳だった──いや、記憶の中から消していたのかもしれない。

「大丈夫……大丈夫よ。あなたのことは私が守るわ、ヒカリ」

 母親はヒカルを抱きしめる。

(違うっ……私はヒカリじゃない! 事故で死んだのは私じゃない! なんでっ……どうしてわかってくれないの!?)

 ヒカルは心の中で叫んだ。
 そして思い出した、自分と同じ顔をしたヒカリの存在を──。

 自分には双子の姉ヒカリがいた。
 大人しい自分とは対照的で、ヒカリは元気で明るかったことを覚えている。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ