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ぼっち─選択はあなたに─

第28章 魂の世界

「覚えてるかい? 初めて私たちが出会った時のこと」

 そう言いながら、久遠は金平糖をひとつ摘まんだ。

「えっ……会ったことありました?」

 全然覚えていなかった。

「私は君の父親が死んでから、常に君たち母娘を見守っていた。本来なら顔を合わせることはしないのだが、あまりにも君が悲しそうな表情をしているので、私は君を元気付けたくなった」
「……」

 そういえば一番母親との喧嘩が酷かった時、雨の中傘も差さずに歩いていた自分に声をかけてくれた人がいた。その人は無言で、大きな傘と袋に入った金平糖を渡してくれた。

「……久遠さんだったんですね」

 甘い金平糖を口に含んだら、少しの間だけ嫌なことを忘れられたような気がした。

「実は私にもアキラという息子がいてね……彼は生まれた時から難病を患っていて、病院のベッドで過ごすしかない人生を送ってきたんだ」
「えっ……」
「だから私は彼のために、魂の世界を作った。魂の世界はいわゆるコンピューターのシミュレーション世界でね、でもそこに住まう者たちは現実のように生きている。彼らにとっては、そこがリアルワールドなんだ」
「……じゃあ他の人たちも、装置の中で眠っているんですか?」

 ヒカルの問いに、久遠は首を横に振る。

「君は特別だ。他の者は皆、アキラも含めて魂のみだよ。肉体はない」
「えっ……」

 意味がわからなかった。
 それは一体どういうことなのだろうか?


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