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ぼっち─選択はあなたに─

第8章 カボチャ祭り

「そっか、シャドーは半年前から現れたんだっけ?」
「そうよ、だから今年はどうなるかわからないけれど……でも大丈夫よ! 討伐隊がいるもの」
「……」
「……」

 そうは言ったものの、レイナもヒカルも不安を隠しきれない。
 なぜならあの夜、討伐隊が夜回りをしていながらも、レイナとヒカルはシャドーに襲われてしまったのだから。

(もしあの時、ユッキーメさんからもらったダーツの矢がなかったら──)

 ヒカルはそう思ったあと、あることに気づいた。

「そうだ、ユッキーメさん!」
「え?」
「レイナ、私ユッキーメさんに会いに行ってくる!」
「え? ユッキーメって誰?」
「中華料理屋の店員さんだよ!」

 ヒカルはそのまま宿屋を飛び出した。
 大丈夫、体は動く。

 宿屋を出ると、ソルトの町は祭り一色に染まっていた。あちこちにカボチャの飾り付けがされ、露店も出て賑わっている。
 道行く子供たちはレイナが言ったとおり、魔女の格好をして大きなカゴを持って歩き、民家の玄関先でお菓子をカゴの中に入れてもらうと、また違う民家へと渡り歩いていた。

(トリックオアトリートとは言わないんだな……)

 そう思いながら歩いてると、中華料理屋の前で呼び込みをしている男性店員を見つけた。

「へい、らっしゃい! らっしゃい! 今なら肉まん、餃子、麻婆豆腐が半額だよ!」
「あの、すみません」
「はいよ、ねえちゃん。御一人様ご案内~!」
「や、違うんです! 食べに来たわけじゃなくて……ユッキーメさんいますか?」


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