僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。
第3章 2人の受験生
実は俺は、勉強はそこそこ出来るほうだ。わざわざ休みの日にまで自習室に通わなくても、普段の塾と、家庭での学習だけで、中学受験ぐらいなら普通に受かる自信がある。それでも自習室通いをするのは、鈴と一緒にいる時間を増やすためだ。受験生という立場で、不自然じゃなく鈴と一緒にいる為には、塾の自習室は最高のスポットだった。
だから、自習室では勉強してるフリをして時々、大好きな鈴の横顔を盗み見る。その為の自習室だ。
「はぁ~~~」
静かな自習室に響く、やや大きめのため息。隣にいる鈴が、なにやら頭を抱え込んでいる。
「あれ?石井さん?」
突然降ってきた声に反応して、二人で斜め上を見上げる。
「あ、青山君…」
鈴が『青山君』と呼んだソイツは、色白でメガネをかけた、細身で中性的な雰囲気の男だった。
「大丈夫?何か困ってる?わからないとこあったら、教えるよ」
鈴、断れ。断ってくれ。そんな俺の願いもむなしく、鈴は笑顔でその申し出を受け入れた。
「やった、助かる!ちょっとさ、ここがわかんなくて…」
そう言って教科書?参考書?をソイツのほうに差し出す鈴。
「…誰?」
俺は鈴をつっついて小声で聞いてみる。
「あ、塾で同じクラスの青山君。頭いいんだよ。青山君、こっちは、うちの、弟分の樹(いつき)」
「へぇ~、石井さん、弟がいたんだ。弟君も受験生?」
「本物の弟じゃなくて、弟分ね。鈴姉の話、聞いてた?あと、俺も一応受験生だよ」
「そうそう。いつきは、中学受験をするんだよね~」
「そっか。弟君もわからないところあったら教えてあげるよ?」
「いえ、俺は大丈夫っす」
だから、自習室では勉強してるフリをして時々、大好きな鈴の横顔を盗み見る。その為の自習室だ。
「はぁ~~~」
静かな自習室に響く、やや大きめのため息。隣にいる鈴が、なにやら頭を抱え込んでいる。
「あれ?石井さん?」
突然降ってきた声に反応して、二人で斜め上を見上げる。
「あ、青山君…」
鈴が『青山君』と呼んだソイツは、色白でメガネをかけた、細身で中性的な雰囲気の男だった。
「大丈夫?何か困ってる?わからないとこあったら、教えるよ」
鈴、断れ。断ってくれ。そんな俺の願いもむなしく、鈴は笑顔でその申し出を受け入れた。
「やった、助かる!ちょっとさ、ここがわかんなくて…」
そう言って教科書?参考書?をソイツのほうに差し出す鈴。
「…誰?」
俺は鈴をつっついて小声で聞いてみる。
「あ、塾で同じクラスの青山君。頭いいんだよ。青山君、こっちは、うちの、弟分の樹(いつき)」
「へぇ~、石井さん、弟がいたんだ。弟君も受験生?」
「本物の弟じゃなくて、弟分ね。鈴姉の話、聞いてた?あと、俺も一応受験生だよ」
「そうそう。いつきは、中学受験をするんだよね~」
「そっか。弟君もわからないところあったら教えてあげるよ?」
「いえ、俺は大丈夫っす」