テキストサイズ

僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第5章 運命の日

 複雑な気持ちだ。ずっと傍に…ずっと、“いつでも会える”お隣さんでいてほしいようにも思う。だけど、せっかくあれだけ受験勉強を頑張ったんだから、第一志望の大学に行ってほしいという気持ちもある。自分でも、自分の気持ちがよくわからない。
 鈴姉の夢を応援をしたい気持ちと、遠くに行かれてしまったら僕の初恋が終わるんじゃないかという恐怖。矛盾してるけど、どちらも本音だ。
 だけど、こうも考える。鈴姉にとって“弟的存在”でしかない今の僕。一人の男として見てもらうためには、一度、離れてみるのも一つの手なのではないか。
 鈴姉の志望校は、短大ではなく4年制大学だ。4年間、県外の大学に通って、就職のタイミングで地元に帰ってきたとしたら。5年後、俺は高校2年生になっている。小6の今は無理でも、高2になったら…。いつも、いつも、ずっと、何をやっても『弟』としてしか見てもらえないのは、自分がまだまだ「お子ちゃま」だから。しばらく会わずにいて、5年後。高2になった、少し成長した僕と再会したら……。
 そうしたら、少しは意識してもらえるかもしれない。『弟分』としての樹ではなく、一人の男として見てもらいたい。あと何年かして、俺の身長が、鈴姉の身長を追い越したら、そしたら、何か変わるんだろうか。

 早く、早く大きくなりたい。今より少しでいいから大人になりたい。家でも学校でも、そんなことばかり考えていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ