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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第2章 1年生と1年生

 だから、早く大きくなりたくて、鈴に子ども扱いされたくなくて、僕は必死だった。牛乳もたくさん飲んだし、小魚もたくさん食べた。カルシウムは骨の成長には絶対に必要だ。カルシウムだけでは足りない。『たんぱくしつ』も体を大きくするには必要と聞いて、一生懸命に食べた。

 自分のことを「僕」って言うのはなんだかちょっと子供っぽいかなと思って、2学期からは自分のことを「俺」って言うことにした。あと「ママ」もやめて「母さん」に変えた。

 ある日の夕食。食卓には俺の苦手な野菜の1つ、ほうれん草があった。ちなみに、俺の苦手な野菜はほうれん草とピーマンだ。あいつら、俺に何の恨みがあってあんな味出してくるんだ…。だけど母さんに言われた。

「お野菜食べないと、大きくなれないのよ?」

えっ、マジで?!それは困る!!

 俺は目を瞑り、鼻をつまんでほうれん草を食べた。だけど前に食べた時に感じたような苦さは無く、意外と食べられた。

「母さん、俺、この前食べたほうれん草は苦手だけど、これなら食べれるよ!」
「そう?ゴマ和え、って言うのよ、それ」
「ごまあえ。わかった、次からほうれん草は、ごまあえにしてね!」
「え。いろいろ食べて頂戴。炒めるだけのほうが簡単なのよ…」

 僕…いや、俺のお願いはあっさり却下された、ように思えたけど、それからはわりとゴマ和えの登場頻度は高かった。まぁ、いつもじゃなかったけど。

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