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てのひらの福袋

第9章 【ゴミ漁りババア】

「あっ、あの人、ゴミ漁りばばあだよ!」
「え??」

制服を着た女子高生らしき二人組がひそひそと話している。二人の視線の先には、ゴミ捨て場のゴミ袋を開いて何か作業をしている高齢の女性がいる。

「まったく。こんなごちゃ混ぜに捨てて…。正しく分別して捨てなくちゃ、ゴミは回収されないんだよ」

ブツブツと独り言を言いながら作業を続ける女性。

「人のゴミ漁るなんて、卑しいよね。ああはなりたくない」

女子高生の一人が汚いモノを見るような目で女性を遠巻きに見る。が、

「あ…待って」

もう一人が何かに気付き、女性の傍に走り寄っていった。

「あのっ、分別作業、手伝います」
「えーよ。お嬢ちゃん、手が汚れるよ」
「でもっ…」
「あたしはちゃんと作業用に汚れてもいい服を着て、軍手もはめて準備しとる。お嬢ちゃんは、それ、学校の制服だろ。汚れるから止めな」

「ちょっと、ゆき、何してんの、よ…」

後から追いついてきたもう一人が話しかける。

「この人は、ゴミの分別がちゃんとされてなくて回収されなかったゴミを分別し直してくれてるんだよ。人のゴミを漁ってるとか、噂だけ聞いて真実も確かめないで決めつけちゃダメだよ」

ゆきと呼ばれたほうの子が、もう一人にまくしたてる。

「でも、人のゴミ開けて中を見るんでしょ。プライバシーとか、そういう配慮は?」

反論を試みる、が、

「そんなの、ゴミ袋に名前が書いてあるわけでもないし、誰のゴミかなんてわかんないでしょ。それに、周りへの配慮が出来てないのは、分別もせずにグチャグチャにゴミを捨ててる人達のほうなんじゃないの?」

ゆきという子の勢いに圧倒されていた。

「お嬢ちゃん、ありがとう。たった一人でもわかってくれる人がいたら、それだけで私は十分だよ。私が、世間になんと噂されてるかぐらいは、知ってるよ」

女性は作業の手を止めて立ち上がり、綺麗なお辞儀をして、お礼を言った。


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