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狼からの招待状

第5章 化石の街

 グレの頬に掛かる髪の流れ──アイスティーを勧め、「チャンミンの…治療は」「はい。薬物の常習…長期の…そうなると、治療薬も、考えなければならなくなります」「どういうふうに」「副作用が強く出たり、ショック状態になったり…薬の作用に過敏に反応する…それから、幻覚」「そんなことも?」首を傾げる。
 「加齢によるものです。脳年齢がチャンミンさんは、かなり老化している」納得したようにユノは頷いた。
 部屋の暖房と窓からの春らしい陽ざしで、温まり、氷の殆ど溶けたアイスティーが、明るい光をテーブルに投げかけている。
 「グレ」「はい」ユノを見つめるひたむきな視線に、笑みを返しながら、「俺も…またチャンミンに会うよ。詳しい話もまた、その時に聞きたい」「お仕事はいいのですか? …それから、婚約者の方が…」首を振りやり、「警察の捜査が入る」「えっ?」「事務所とたぶん俺の部屋も…、薬物で立件されたんだ」



 ……ベルのけたたましい、金属音が鳴り続けている。ベッドから手を伸ばし、古めかしい受話器を取った。
 「ユノさん、〝Kスタァ〟です、薬物とチャンミンさんのお話をきかせてください」

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