テキストサイズ

狼からの招待状

第5章 化石の街

 「キム侍従と話したのですが」「うん」「チャンミンさんは、微熱が治まったら、脳リハビリでの治療予定だそうです」
「…どう云うものかな」 砂と小石の混じった未舗装の道路を、緩やかにハイヤーは走りゆく。
 「最初に適性検査をして、治療の計画を立てます」「治療は例えば…?」「知能テストのパズルのような問題を、繰り返したり、簡単な事務作業─色分けや記号の入力をします」
 ユノは小さく頷く。「そうやって…脳の神経を運動させていくんだね」「はい。チャンミンさんは、薬物依存の脳の状態に沿った、リハビリになります」「薬物依存か」 ユノが呟き、「俺はてっきり、事故でこうなったと思ってたけど─」「検査を繰り返しましたが、事故などの外傷によるものでも、脳疾患でもありませんでした」グレが応える。
 「ともかく─、リハビリ適性の検査を受けてから、今後は考えていく。今その段階です」ハイヤーはなだらかな坂を降り、ドアミラーに青い光が反射する。



 ──「アジョ、シ…(おじさん)」たどたどしい口調に、淡い髪いろ。 小さな巻き毛を揺らし、「えほんよんで」するりとユノの膝に座り込む。キャラメル・マッキアートのかんばしい、匂い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ