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狼からの招待状

第5章 化石の街

 前からぶつかって、そのまま走っていく─ポニーテールに桃色のガーデン…プリーツのロングスカート…(ウンギョン!?)
 振り返ると、地下への階段を駆け下りる後ろ姿─ポニーテールの髪がはねる。
 (地下は…駐車場だ)
早足で後を追うと、薄暗がりの広い駐車場の端に、灰色の車。その脇で、ポニーテールの若い女と向き合った男が、声をひそめて言い合いをしている。
 「ウェ…オデ…!」「…オットケ…オッパヌン…」きれぎれの、ハングルが、ユノの耳に届く。
 やがて、男が若い女の腕を掴み、灰色の車に無理やり押し込み、自分は運転席に座り、急発進させる。
 ユノの前をスピードを上げて車は過ぎて行った。
 


 (─ウンギョン、記者の…アルバイト…の)ホテルの部屋に帰っても、落ち着かなかった。(あの男は)ウンギョンより年嵩の、上背のある…(オッパ!)ウンギョンの切羽詰まった声と表情…
 (あの二人。もしかしたら…)揉めていたやりとりの─ハングルの抑揚(オギャン)、発音(パルン)…(イルボン・サラン…日本人?)──スマホが、苛立たしげに点滅を繰り返している。

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