
狼からの招待状
第5章 化石の街
「女性警官とデートだったのか?」云われて笑い、「タクシーの運転手さんからです、港のほうでよく客を乗せるそうです」
「リーダー」それまで黙って皆の話を聞いていたグレが、「二人は大阪から名古屋に金銭トラブルで、逃げて、警察が追っていた。男は元ホストのド・フニで、日本名は、坂西マコト。女はイ・ウンギョン、同棲相手。日本名、小村静香」「─マコト? 1億5千万の…マコか?」紅い鮮やかな色の絹のシャツの男が、驚きの声を出す。
「あっ…俺も聞いた」「何だ? それ─」「噂に、なってたのか」リーダーが訊くと、「はい…後輩がクラブで」訊かれた青年は、眼鏡のフレームを押さえながら話す。端正な顔立ち…。
「1億5千万のマコ。わたしは皇女ユアンナ…」「皇女?」「酔うと繰り返しそう云うって─話でした」「ひょっとして、《ナイトメア》の皇女様…?」────────
男の汗まみれの顔に、敵意剥き出しの碧眼─「Oh! …」不意のパンチに、鼻血が流れて、リングにいくつもの染みを作る。
白いスェット姿のトレーナーが、声をかけると同時に、男はくたくたと膝を曲げた。
「リーダー」それまで黙って皆の話を聞いていたグレが、「二人は大阪から名古屋に金銭トラブルで、逃げて、警察が追っていた。男は元ホストのド・フニで、日本名は、坂西マコト。女はイ・ウンギョン、同棲相手。日本名、小村静香」「─マコト? 1億5千万の…マコか?」紅い鮮やかな色の絹のシャツの男が、驚きの声を出す。
「あっ…俺も聞いた」「何だ? それ─」「噂に、なってたのか」リーダーが訊くと、「はい…後輩がクラブで」訊かれた青年は、眼鏡のフレームを押さえながら話す。端正な顔立ち…。
「1億5千万のマコ。わたしは皇女ユアンナ…」「皇女?」「酔うと繰り返しそう云うって─話でした」「ひょっとして、《ナイトメア》の皇女様…?」────────
男の汗まみれの顔に、敵意剥き出しの碧眼─「Oh! …」不意のパンチに、鼻血が流れて、リングにいくつもの染みを作る。
白いスェット姿のトレーナーが、声をかけると同時に、男はくたくたと膝を曲げた。
