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狼からの招待状

第5章 化石の街

 「50歳近い男優の先輩たちにも…勝てそうにない」また、ため息…「芸能界は人柄と才能─、一心不乱になる才能」次の言葉を待つような沈黙。「夜、呑みに出掛けたり、仲間と旅行したり…、一切無しで」遥かの霧の海─「結婚どころか、恋愛も、頭にない」「…」「仕事…俳優…役に成りきるだけが唯一楽しい。舞台の上で歌うだけが…それくらいの─」チャンミンの首が、がくんと垂れた。



 白い正方形の封筒。写真が入っているらしい。 ─ホテルの部屋に、ユノはひとりだったが、封筒を開けると、微かにコロンの香─
 数枚の写真が、小さなテーブルに舞い落ちた。 …チャンミンと並んで、ライブ開幕の挨拶をするユノ。…群舞のセンターを踊るチャンミンを、幕間から見守るユノ。…ソロの舞台、女性ダンサーに囲まれるユノ。…アンコールで、仲間たちと抱き合う二人。(いつ頃だったかな、─何年前?)黒く光る衣装の羽根飾り─(確か、台湾。ハノイ、バンコク…それから北京)所属事務所の歌手総出演の音楽イベント。
 (懐かしいな)ユノの膝に一枚が落ちた。(チャンミン)ユノと握った手をたかだかと挙げ、片手の真っ赤なタオルをレッド・オーシャンの客席に放るチャンミン。汗が光る顔…… 

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