
狼からの招待状
第5章 化石の街
─あいつ…ティム。義務と将来を考えていることが、あるんだろう…何気ないふうにレラは云った。
封筒に写真を入れ直し、バッグに収めた。チャンミンにも見せたかった。
コロンの香が、また、何処からか立ち昇る。
濃い色合いのレンタカーは、曲がりくねった舗装道路をかなりのスピードで、頂上を目指して飛ばす。荒れ野のように、枯れ葉めいた雑草が地面に這う、緑のない丘が続く。
視界が大きく開け、フロントガラス越しの陽ざしが、熱く感じられる。 外に出ると、下から吹き上げて来る風が冷たい。
その氷のような風に、肩までの栗毛いろの髪が動くと、大海に浮かぶ宝島に舞い降りた、鷹の胸の羽毛を思わせる。
「こっちです」指で示すフライの後から歩くと、また冷たい風─眼下は地獄の底のように落ち込みながら、広がっていた。
「この向こう、また村があるんです」離れた丘陵を掠めるように、悠々と霞んだ雲が流れる。
「病院の近くに、こんな場所─知らなかったな」「普段は霧がかかってます」足下の開けた谷のような土地には、白い家が幾つも小さく見えた。 「別荘の集落、避暑地です。冬はかなり寒いらしい」「今だって、風つめたい…」
封筒に写真を入れ直し、バッグに収めた。チャンミンにも見せたかった。
コロンの香が、また、何処からか立ち昇る。
濃い色合いのレンタカーは、曲がりくねった舗装道路をかなりのスピードで、頂上を目指して飛ばす。荒れ野のように、枯れ葉めいた雑草が地面に這う、緑のない丘が続く。
視界が大きく開け、フロントガラス越しの陽ざしが、熱く感じられる。 外に出ると、下から吹き上げて来る風が冷たい。
その氷のような風に、肩までの栗毛いろの髪が動くと、大海に浮かぶ宝島に舞い降りた、鷹の胸の羽毛を思わせる。
「こっちです」指で示すフライの後から歩くと、また冷たい風─眼下は地獄の底のように落ち込みながら、広がっていた。
「この向こう、また村があるんです」離れた丘陵を掠めるように、悠々と霞んだ雲が流れる。
「病院の近くに、こんな場所─知らなかったな」「普段は霧がかかってます」足下の開けた谷のような土地には、白い家が幾つも小さく見えた。 「別荘の集落、避暑地です。冬はかなり寒いらしい」「今だって、風つめたい…」
