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狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

「僕思うんだ─」「何をだ?」「若いうちに、習慣性の毒に馴染むと、体が変わってしまう」「煙草やアルコールもそうだ」「中毒になる。─奴隷みたいに支配されて、解放がない」「それで奇行やヒステリーが起こる」 扉を通して、軽いチャイムの音が下から聴こえる…正午になったらしい。
 「俺はもう行かないと…」腰を上げた。
「白昼のデート、健全だ」「健やかに…カフェ、映画に食事」「それ─、退屈」「ドライブ、音楽会、ナイト・クラブ。─行くよ、グレ」肩までの金髪が、がっしりした首すじで纏められ、涼しげだ。
 …シォニが通用口を出ていく。閉じたドアがすぐにまた開き、小柄な少年が走り込んで来た。早出のボーイ見習いらしい。グレに会釈して、ロッカー室に急ぎ足で消える。
 …と、通用口の隙間から、こちらを頻りに覗き込む顔があった。

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