
狼からの招待状
第6章 風のなかの二人
(昨日メール有難う、午前中に軍の訓練解除になった。チャンミン…どう?)「ユノ先輩─」西陽がコンクリートの壁面を、檸檬いろに照らす。
「お疲れ様でした。そちら真夜中でしょう、お話していいんですか」(あぁ、親の家だから)「帰省された?」(相談ごとがあって)「すぐ、戻られると思ってました」(チャンミン、落ち着いてるみたいだし)「明け方、咳が出て─風邪気味のようです」(そうか。来週、帰るよ)「ユノ先輩が会われたら、チャンミンさん元気になるんです」(早めに帰る)「お待ちしてます」…足早にグレは実験室のある棟に向かった。
西陽が雲に遮られ、アースカラーのシャツの釦が、銀色になる。
「忙しそうだな」窓越しに声がかかった。「学会の下準備だよ」「オ! 学生のグレ先生…ノーベル賞狙い?」「ポスターとスライド作りだよ」笑って、窓際から離れる。 留学生会館のほうから、二人の女性が連れ立ってやって来た。グレとすれ違うと、お喋りを止めて少女のように揃って頬を赤らめる。
ぴゅうと口笛─。振り返ると先ほどの窓から、手をふり、にやける顔。 …軽いエンジン音。スクーターが裏門から入り、学生寮に向かっていく。寮の食堂に配達らしい。
「お疲れ様でした。そちら真夜中でしょう、お話していいんですか」(あぁ、親の家だから)「帰省された?」(相談ごとがあって)「すぐ、戻られると思ってました」(チャンミン、落ち着いてるみたいだし)「明け方、咳が出て─風邪気味のようです」(そうか。来週、帰るよ)「ユノ先輩が会われたら、チャンミンさん元気になるんです」(早めに帰る)「お待ちしてます」…足早にグレは実験室のある棟に向かった。
西陽が雲に遮られ、アースカラーのシャツの釦が、銀色になる。
「忙しそうだな」窓越しに声がかかった。「学会の下準備だよ」「オ! 学生のグレ先生…ノーベル賞狙い?」「ポスターとスライド作りだよ」笑って、窓際から離れる。 留学生会館のほうから、二人の女性が連れ立ってやって来た。グレとすれ違うと、お喋りを止めて少女のように揃って頬を赤らめる。
ぴゅうと口笛─。振り返ると先ほどの窓から、手をふり、にやける顔。 …軽いエンジン音。スクーターが裏門から入り、学生寮に向かっていく。寮の食堂に配達らしい。
