
狼からの招待状
第6章 風のなかの二人
「チャンミン、あ…、エミンさんのお父様が」「チャンミンさま。お嬢さまは会長のご看病で、フロリダにおられます」
「フロリダ?」キム侍従は深々と、頭を下げる。
「チャンミン。…部屋に戻ろうか」黙ってしまった横顔に、ユノは明るく声を掛けた。
「お戻りください」先にたって、車椅子を運んでくる。「僕が押します」侍従は一礼して、寝椅子を移動した。
車椅子に乗り換えても、チャンミンは無言…窓はパステルカラーに彩られていく──
ラウンジで疲れたのか、病室に戻るとチャンミンはすぐベッドに横になり、寝息を立てはじめた。
「ユノさま…」キム侍従が目を伏せて、熱い紅茶を運んでくる。
「─チャンミンは、婚約解消を…」「何とも申し上げられません」首を振る侍従はやつれた表情だった。チャンミンの気紛れや我が儘に、日夜振り回されているらしい。 「そう云えば、スイスの保養地は…」「風光明媚な、静養に相応しいところでございます」
口髭を自慢気に動かした。
「フロリダ?」キム侍従は深々と、頭を下げる。
「チャンミン。…部屋に戻ろうか」黙ってしまった横顔に、ユノは明るく声を掛けた。
「お戻りください」先にたって、車椅子を運んでくる。「僕が押します」侍従は一礼して、寝椅子を移動した。
車椅子に乗り換えても、チャンミンは無言…窓はパステルカラーに彩られていく──
ラウンジで疲れたのか、病室に戻るとチャンミンはすぐベッドに横になり、寝息を立てはじめた。
「ユノさま…」キム侍従が目を伏せて、熱い紅茶を運んでくる。
「─チャンミンは、婚約解消を…」「何とも申し上げられません」首を振る侍従はやつれた表情だった。チャンミンの気紛れや我が儘に、日夜振り回されているらしい。 「そう云えば、スイスの保養地は…」「風光明媚な、静養に相応しいところでございます」
口髭を自慢気に動かした。
