
狼からの招待状
第6章 風のなかの二人
──「もう…いいです」青年が抱えるテーブルクロスを、受け取ると、「いろいろ有難う。開店時間だから」「じゃ。…おれ、客ね、いちばん乗り」そう云って、カウンターのど真ん中に座る。
聞こえよがしのため息をジャスミンがつく。
「メニュー見せて」平然と、広げる。「テキーラ、…シグロ、に─」アメリカン・コミックのプリントされたトレーナーの、長い袖は捲ってある。
「カクテルは、マティーニは、…」ぶつぶつ独り言の青年を放って、大型冷蔵庫を開けた。
「─ジャスミン。マティーニは、ちょっと待ていに?」…黙っていた。
「面白くない?」「…」「不機嫌かな─いい加減に、しろいトレーナー! お? …黒だった」カウンターから、テーブルの間に、ジャスミンは背を向けて出て行ってしまう。
「な…、今日の実習のシェーカー振って─」カウンターの横手から、どさり…と重い音…
「ジャスミン、なんだ」ワイン庫の奥。狭い通用扉に青年は走り寄る。
「気にしなくていい。ご苦労だったな」マスターの労いの言葉にも、俯いたままのジャスミン… 「おれが、だらしなかったんです」
聞こえよがしのため息をジャスミンがつく。
「メニュー見せて」平然と、広げる。「テキーラ、…シグロ、に─」アメリカン・コミックのプリントされたトレーナーの、長い袖は捲ってある。
「カクテルは、マティーニは、…」ぶつぶつ独り言の青年を放って、大型冷蔵庫を開けた。
「─ジャスミン。マティーニは、ちょっと待ていに?」…黙っていた。
「面白くない?」「…」「不機嫌かな─いい加減に、しろいトレーナー! お? …黒だった」カウンターから、テーブルの間に、ジャスミンは背を向けて出て行ってしまう。
「な…、今日の実習のシェーカー振って─」カウンターの横手から、どさり…と重い音…
「ジャスミン、なんだ」ワイン庫の奥。狭い通用扉に青年は走り寄る。
「気にしなくていい。ご苦労だったな」マスターの労いの言葉にも、俯いたままのジャスミン… 「おれが、だらしなかったんです」
