テキストサイズ

狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

 「恐るべきお子さまだ」腕組みしたマスターは、リュー青年に目を向け、「病院行ったほうが、いい」真顔で云った。
 「平気です、勝手をして…。ご心配かけます」「頭を殴る─、鬼畜生め…。病院行こう、俺、一緒に行くよ」タクシーを呼ぼうとスマホに手を伸ばしながら、「警察には?」「オレが、通報する─金持って行け」「どうしたんです、今夜…。クローズの札出てますよ」
 薄手のレインコート姿のグレが、不思議そうな声を出しながら、扉を開けてやってきた。
 ─小走りにグレに駆け寄るジャスミン。



 「怪我…どう?」笑顔が返ってきた。
 アクシデントから、丸1週間。バーテンダー・スクールの休み時間。ジャスミンとリューは、実習室の椅子に掛けていた。
 「何てことないよ」額の消えかけた痣を隠すように、前髪をなおす。
 …病院で、レントゲン検査を受け、異常なし…付き添ったフライから翌日きいたが、気になっていた。
 「よかった…」安堵の表情のジャスミン。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ