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狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

 「あのこ、どうしたかな」「うん。…」─警察が、保護目的も兼ねた捜査を続けている。少年の写真も公開したが、10日近く経っても、行方不明のままだった。
 ……身上書は全てでたらめだった…貼られた写真以外はね……グレの言葉が、蘇る。
 「あのこ─マサキって名前でボーイ見習いしてたって…」「ふん? 本名かな? それも、疑わしい…」残ったコーヒーを飲み干す。
 「ジャスミン─、その紅茶匂い良いだな。美味いか?」
 


 …やがて、運ばれた紅茶を飲み、「偽の身上書か。大した奴…」「自分のこと、殆ど話さなかったって」「警戒心旺盛だな」「ボーイのなかで、浮いてたって…」「立派に不審がられてたか」「クラブは未成年はお断りだから…、歳も21って書いてあったとかも、…嘘っぽい」「ガキのくせに─何様だ」ロシア紅茶で、酔ったらしい。口調が、荒っぽい。
 「グレ兄さんなんか、フラれて、悄気てたから、あのこにお小遣いあげたとか…」「─罰当たりめ」紅茶碗をテーブルに置く。テーブルのマットは、温かみのある素材で織り込まれた手芸品らしかった。
 「おれたちが、そのマアキ? 取っ捕まえたら…」「マサキ。眞佐樹─こう、書くらしい」

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