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狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

 「ユノ、どこ行ってたの」晩秋の陽が彼方まで輝く窓際に、車椅子のチャンミン。
 「電話さ」「長電話だね」「ちょっと、ね」「マネージャー? 打ち合わせ?」「いや…」ソファに腰を下ろす。
 「喉乾かないか」「キムを呼ぶよ」手元のスマホに触れようとする。
 「俺…買ってくるよ、お前は」「要らない」広々としたラウンジの向こうに高いカウンター。その奥に、無人の売店がある。
 背中にスマホの呼び出し音─友人かららしく、笑いながら喋りはじめるチャンミンの声。
 …(ユノ。おまえ、実家に戻っておいでよ)…母親のやつれた声。─ココアとスポーツ飲料をカードをスキャンして買う。`Thank you …´の機械音声が追いかけてきた。
 (おまえの父さんも─、あたしらもう年寄りだよ…孫もいるしね)…チャンミンはユノに背を向けて、楽しげに喋り続けている。…(あたしらの娘は戻ってきた。息子も、と思うよ)「そんな裏技…ゲームじゃないから? ばか云って…」ソファに掛け、ココアを口に運ぶ。
 「…だよ、そればっかりやってるとロクなことにならない」笑う声──……(おまえ─ユノ、しっかりして、長男なんだから)………………………………

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