テキストサイズ

狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

 心理室のドアを開けた、白いジャケットの男が声を掛け、痩せた被験者を廊下に連れ出し、病室まで付き添い歩く。
 「今日は不安定だが…、大人しいな」「看護師が、昨夜はよく眠って、睡眠薬も不要だったと云った」「心理療法が出来るなら、いい状態ですよ」話し合っていた青年医師たちが、ヨナ・パイクの姿に驚く。
 「Dr.パイク。いつお戻りに?」「吃驚しました」後輩たちに笑みを見せ、「結婚準備。─挙式や持参金は無しだが。婚約会見もな…」若い医師らは、一斉に吹き出す。
 「オ…。グレもいたか」「先輩方、お久しぶりです」「チノ教授はご活躍かな」「バイタリティーに圧倒されています」「バイトの…ホスト続けてるのか」「はい。新事業のエスコートクラブです」「充実してるな」笑い声になった。



 ボーイが運んできた食後のコーヒー。ウイスキー・ボンボンが小さな陶器のカップに盛られている。
 「ハロウィンか」ヨナ・パイクはボンボンをひとつ指先で摘まむ。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ