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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

…アルミホイルに、出来たてのホットドッグを器用に置く。



 「フライ。今夜…泊まるか?」─ジャスミンが最終バスで帰って行った。マスターは帳簿を閉じ、訊く。
 「そうさせて下さい。朝の一番バスで帰れば、グレは徹夜勉強が出来る」「ワンルームだからな、お前たち。ま、適当に寝ろ」「片付けたら、シャワーいただきます」パン屑を指先から払い落とす。
 「自由に使ってくれ。二部屋借りられるバイト代は出せないが…。金が貯まるまで、連泊してもいい」フライが白い歯を見せて、笑う。
 「バイトバイトで忙しいだろう。それでも、目的あって働いてる─フライ、お前には安心して仕事を任せられる」「兄貴…マスターにもそう云って貰えるし─毎日のバイト、張り合いありますね。俺が働いて、グレを独り立ち出来る医師にする。だからかな…、疲れとかストレスも感じません」


 がらんとした剖検室。向こうの白壁を開けると、正方形の扉が並んでいるロッカー。そのなかに…「遺体安置の期限は過ぎました、ここは霊安所ではなく、剖検室です」「教授…。困りましたな」解剖台の脇のリサに、気づかぬふりで尚も云いかけ…ポケベルのけたたましい呼び出し音。

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