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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

 「待たせたわね、リサ」コートの両肩を大げさに竦め、初老の男は出て行く。 
 「いいんですか。警察でしょう」「遺体をしばらく預かってくれとのご要請よ」「え?」「例のマダムよ」「ご遺族は…」「そのご遺族のご要望だそうよ」「それ─って」チノ教授は笑って、リサの言葉を遮った。
 「いずれは献体になる…リサ。宿題の答えを聞かせて頂戴」「被害者は、自殺…ただ、第三者の手を借りた」「うん。それで?」「首を絞められ…溺死。溺死は自殺」「入水した?」「洗面器に、です」「彼女は小人の妖精だった?」
 悪戯っぽい瞳のチノ教授に、リサは現場の見取り図を広げ、「洗面器のそばで、うつ伏せで倒れてました」「そうよ」
「洗面器はひっくり返って、水が溢れていました」「顔を洗った…。それとも、足の裏を?」「顔です。洗ったのではなく、浸けたんです」剖検室の扉がノックされた。「教授、おいでですか」若い女性の声は准教授のアリシア・ラム。
 「教授会の時間ね。リサ、良いセンスよ。次の宿題は─」「次? 私。この宿題も半分しか解けてません」「残り半分が次の宿題よ」扉が開き、ラム准教授の顔が覗いた。 黒髪と、白いイヤリング。口元に微笑…



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