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狼からの招待状

第8章 水仙月

 「僕と同い年でグループ総帥。学生の僕は気楽です」また、照れたような笑みを浮かべ、白いスエードのスラックスの足を揃えた。
 微笑んだ侍従は、「お若いかた。羨ましゅう、ございます」銀製の蓋を取る。
 「僕はもう結構です」頷き、静かに蓋を置く。 「まだまだ、遊びたい盛り…。総帥の座は荷が重すぎましょう」
 ─ティー・ポットの傍らに、紅茶の葉の壜。
菫色の混じった、紅茶の葉。
 「仲の良いご兄弟…双子の─お互いが、助け合えば…歳若くとも…。いずれは、グループを率いるお二人…」
 熱心に耳を傾けるグレ。
 「これは…ご無礼致しました。─年寄りの、繰り言をグレさまに、申し上げました」「興味深いお話です。双子の母親は年若いそうですね」「…よく─グレさま、ご存知でらっしゃる」虚を突かれたらしく、キム侍従は口籠る。
 「ゴシップを読んだんです、ホストのアルバイトための教養です」三たびの照れ笑い。
 連れたように、侍従も笑い顔になり、「ご勉強、熱心でらっしゃる…。グレさま」「そう云えば、前会長…夭折されましたね、若い奥さまと双子を遺して」「そこまで、ご存知とは…、20数年─昔になりましょうか」

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