無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

タンブラーを再び手にしたユノの後ろを、熱いステーキの匂いをさせ、フライがワゴンを運ぶ。
　下卑た冗談を交わしながら、食事をはじめる3人。クチャクチャと口に肉を入れたまま、喋り、赤いワインを啜っては、哄笑する。悪魔の酒宴…… 　
　フライもグレも黙々とカウンターのなかで立ち働き、招かざる客たちを完全に無視しているようだった。…いとまを告げ、席を立とうとして、後ろで悲鳴とガラスの割れる音（チャンミン）─振り返ったユノの目を、残忍な光る目が捉えた。



　床に座り込んだ中年男が目のふちを赤くして、頭をさすりながらチェン兄きを睨んでいたが、若い男のきつい視線に目を伏せた。
　「何か用? おっさん」ユノを小馬鹿にした口調のチェンは、腕組みをして椅子に凭れ、両足をだらしなく開いた姿勢。
　小さなホウキとちり取りを手にしたフライが、「ソンニン。チュシマセョ(お気をつけて)」ワイングラスの破片を片付けながらユノを送り出そうとした。
　「こっちの顔をチラチラ眺めてた」チェンが云うと、若い男がユノをじろりと見る。「失礼しました」「失礼だって? …」その言葉が合図のように、若い男が立ち上がり、ユノの襟首を掴みかけ─尻もちをつく。