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狼からの招待状

第2章 霧魔

仕方なく少女の隣に腰を下ろす。
 「あいつはもう良いらしいんだ」「冴えない顔ね」金髪の豪奢な光り─。「治って退院しても、戻ってこないものね」クスクスわらう声─「何が可笑しい?」「別に。… 」口の端だけの、薄笑い。
 腰を上げかけたユノに「どこ行くの」「教会だよ。教えてくれた所さ─」「昨夜の彼。恋人にそっくりの」「違う。別人だよ」蝋の白さの頬に金の髪の毛が、かかる。
 「二階建てバスから見たのも」また、クスクスわらう…「この前、タクシーで追いかけたのも」「だから、違う」「気になるんでしょ?」「行くよ、もう」立ち上がり、背中を向けようと─「サイクリングの男のこ。可愛いお尻だった、見てたわね」「…」「吃驚? あの大きな猫が、私」
 立ち尽くすユノに、「私は何にでも化けられるの」「ナトッケビ(白昼の幽霊)─消え失せろ…」掠れ声になって身を翻して駆け出すユノ。
 「生け贄よ─!」……
ベンチに座るイボンヌ。 頭が徐々に垂れ…やがて全く動かなくなった。 日差しが斜めに小路を過り、イボンヌを照らしたが、影が、なかった。


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