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狼からの招待状

第2章 霧魔

羞じらう声で、そう云った。



 …拍手に、フライが弦をかき鳴らし、グレが深々と一礼─、その笑顔がいっそう、場を華やかに、盛り上げた。
 アンコールの声に、「ユノ先輩、お願いします」皆、どよめく。
  ユノの帰国パーティー。送別会は〈アンゲ〉を貸し切りにして、歌声酒場のように夜通しの騒ぎ…「ヨロブン,コマォ(皆ありがと)。気持ち込めて─、『ワン・モア・ナイト』」口笛と潮の音のような拍手に、ギターの爪弾くメロディーが、重なった。
 ……歌詞を噛みしめる、丁寧な歌いぶりに、聴き入り…やがて「ワンモアナイト」の大合唱に、なる……(チャンミン)涙で潤んで見えるジャスミンの瞳──一昨日の夜。ホテルの部屋に、ジャスミンが訪ねて来た。
 〈アンゲ〉で訊いたと云う。新しいバンダナを差し出し、礼を云う。バンダナには紅いガーベラが描かれていた。
 旅行鞄に荷物が詰められているのを見て、目を見張る。(帰るよ。退院できるらしいし)驚き、やがて黙ってうつむいた横顔が、少年の頃のチャンミンを思わせた……
 ──(送別会をありがとう)ユノが微笑んで見つめると、ジャスミンもつられたように、笑顔になった。

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