
狼からの招待状
第2章 霧魔
「開頭─とか」「挿入したドレーンのガーゼフィルターが濡れ、排出の液の赤黒いものが、濁りました」「それは?」「脊髄液の漏れだそうです。脳のクッションの詰め物が、漏れ出したのです」 テーブルの絵本のような白い本の表紙を開き、「クッション…硬い膜。ここから、漏れた」解剖人体図を指した。「クッションの詰め物が、無くなる。脳がダラリと垂れ下がる、Brain Sag」手入れの良い細い爪先が、脳のモデル図をなぞる。
「そうなる前に、ドレーンを抜く。脳のなかの血塊を取り出す。カンファレンスが終わり次第…手術です」本を閉じた。
「従兄の方から良好ときいたのですが」「私もそれで安心しておりました。ところが、おとといの夜─液が濡れ出し…」「何か用? あんた」赤鬼の形相で、歯を剥き出すエミンが入ってきた。
「出てって」ドアを乱暴に開け、「云ったじゃないの! もう来ないで─」廊下に出たユノの鼻先で、音を立ててドアが閉まった。
「そうなる前に、ドレーンを抜く。脳のなかの血塊を取り出す。カンファレンスが終わり次第…手術です」本を閉じた。
「従兄の方から良好ときいたのですが」「私もそれで安心しておりました。ところが、おとといの夜─液が濡れ出し…」「何か用? あんた」赤鬼の形相で、歯を剥き出すエミンが入ってきた。
「出てって」ドアを乱暴に開け、「云ったじゃないの! もう来ないで─」廊下に出たユノの鼻先で、音を立ててドアが閉まった。
