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狼からの招待状

第2章 霧魔

 「ユノ先輩」モップの手を止め、驚いて目を見開くグレ…。淡く香水が、薫る。「お帰りになったとばかり─」「チャンミンが、緊急の手術を…空港から、戻ったんだ」 唇を開きかけたグレの肩越しに、「ワン、モアタィ…ワァンモ─ …ユノ先輩」唖然として、フライが立ち止まり、「どうしたんです、先輩」「フライ。チャンミンさんの手術で、帰国を止められた。…ユノ先輩、どうぞ」椅子を引いて、勧めた。
 熱いおしぼりと、ソーダ水が目の前に置かれる。
「お疲れのようですね」軽く頷いたユノは、ソーダをひと口飲む。強炭酸が喉をひりつかす─
 「チャンミンさんは、もう退院って」「うん…処置中に変わった。手術をすることになった。今夜」強炭酸の瓶を、ユノのグラスに傾け、「開頭ですか? 血腫を除去する手術」グレが問いかけた。
 「そうらしい。病院できいた」「血腫って、何だ」「血塊、血の塊のこと。血瘤とも云います」 フライの質問に、歯切れよく答える。「開頭して…」「モニターを見ながら、血腫を取る手術です」ユノが、「そうすれば、チャンミンは大丈夫なのか…」呟くように云う。
 


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