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狼からの招待状

第2章 霧魔

 …「身元不明のチャイナ系男性、変死体で発見」…旅行バックの中身を深夜、ホテルの部屋で整理していると、背後の壁の、小型TVからニュースの声…チャイニーズ?…振り向くと、「不法移民によるトラブルか─」淡い金髪の女性キャスターが、早口で速報を伝えている。
 今朝、引きはらったばかりのホテルに、夜遅く再び戻った。朝まで滞在していた部屋と同様な、質素なもの─「遺体はエルム通りの裏に位置した教会の敷地…」白い十字架が、画面いっぱいに大きく映された。
 ─禿げあがった額を赤くして、何か云いながら首をしきりに振る眼鏡をかけた、(あの教会。あの…イボンヌか)神父……「被害者は信者ではない。教会は無関係と─」 (あの神父の教会で)ニュースは次の話題に変わった。ユノはTVを消し、ベッドの隅に掛けた。  ニュースの内容に思いを巡らす。イボンヌの仮面めいた顔…、生け贄と叫んだ声。(チャイナ。中国人)記憶のなかから、浮かぶ……震え出したスマホを取った。(ユノさま)やや高めな侍従の声。(キムでございます、良いお知らせを─)「手術、成功ですか」(いえ。手術は不要になりました)

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