
狼からの招待状
第2章 霧魔
「〈デミアン〉ご存じでしょう」「ナイトクラブよね、会員制の」「正確にはレディース・クラブ。僕そこでバイトして学費を稼いでるんです。出張ホスト…レイ」─エミンの頬に血がのぼった。
「大学も同じです。縁がありますね」腕環が黄金に光る─「学部はどちら? やはり、経営学を?」「え。え、もちろんよ」「留学されてご苦労もあるでしょうが、お父さまはお楽しみですね」「期待に応えたいわ」特別室の隅に控えるキム侍従は、表情を全く変えず、微動だにしない。
紅茶碗を口から離し、「病室に戻られたばかりだし、兄さんにご挨拶して失礼します」「あら、まだいいじゃない?」
ピンクの口紅の唇を突き出し、「医学生に、いろいろ訊きたいわ」「何でしょう? 勉強不足な僕に…」「相談したいのよ」「お役に立てるかな」「あなた出張ホストでしょう」「何処に出向けばいいんです」「ここでなければいいわ」「それなら明日、大学で会いましょう」「カフェテリア?」「学生会館。最上階の学生ラウンジは眺めもいいし、ゆっくり話せます」エミンの口の端が、微妙に震えた。
「大学も同じです。縁がありますね」腕環が黄金に光る─「学部はどちら? やはり、経営学を?」「え。え、もちろんよ」「留学されてご苦労もあるでしょうが、お父さまはお楽しみですね」「期待に応えたいわ」特別室の隅に控えるキム侍従は、表情を全く変えず、微動だにしない。
紅茶碗を口から離し、「病室に戻られたばかりだし、兄さんにご挨拶して失礼します」「あら、まだいいじゃない?」
ピンクの口紅の唇を突き出し、「医学生に、いろいろ訊きたいわ」「何でしょう? 勉強不足な僕に…」「相談したいのよ」「お役に立てるかな」「あなた出張ホストでしょう」「何処に出向けばいいんです」「ここでなければいいわ」「それなら明日、大学で会いましょう」「カフェテリア?」「学生会館。最上階の学生ラウンジは眺めもいいし、ゆっくり話せます」エミンの口の端が、微妙に震えた。
