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狼からの招待状

第2章 霧魔

赤いセーターに、Gジャンの重ね着、後ろにかかる赤茶の髪を、長めにしている。
 「そう…ジャスミン」「はい」小さな声の返事。頬は紅に染まった。
「送別会を嬉しかった。また、戻ってきた」「あの。チャンミンさん。良くなってください」「うん。心配ありがとう…」 ─霧が深く街角に立ち籠めたらしい。冷気が階段を下りて来る。「ジャスミンって本名─」「グレ兄さん」話の途中でユノを離れ、階段を駆け上がる。「アンニョン…。ジャスミン」
 扉の前に佇んでいるユノに、「どうぞ、お入りください。今夜は霧が冷たい」声を掛け、ジャスミンの肩を抱く。
 笑顔でグレを見上げる、ジャスミン…まるで仲の良い兄弟のように二人は肩を並べ歩く。
 …月の王…雲に隠れた王の顔─顔なき王の、グレの横顔…ジャスミンに話しかける……



 「要は、嘘つきな彼女。…お嬢さま、か」フライの言葉に、グレは黙って頷く。
 ジャスミンは仲間と帰って行った。閉店した〈アンゲ〉は、夏の名残が漂うひとけのない砂浜のように、感じられる。
 「学生会館。あそこは学部生でないと入れない。彼女はきっと、聴講生」

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