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狼からの招待状

第2章 霧魔

 フライはマスターに向けて、「警察来たんでしょ」「…いろいろ、訊いてきたよ」棚の周りやレンガ壁を拭き掃除しながら、マスターは答えた。
 「変死体だなんて、気味悪いな」「─あまりいいものじゃありませんよ」グレが淡々とした口調で、「うちの教室で検死してるんですが、顔は潰れて、─惨殺です」「グレ」柔らかいフライの声。
 「あ─」ユノを見て、「すみません。不快な話しを…こんな夜の時間に」伏し目になり、頭を下げ、「失礼しました」
 「ユノ先輩。あの教会は当分、立ち入り禁止だそうです」「うん…そうだろうね」「犯人が捕まっても、あの辺─もう行かないほうが、いいです」
 軽くユノが、頷くと、「今週の日曜礼拝。僕の通ってる教会に来ませんか」明るい表情でグレが誘うと、「俺も行く。バイト休んで行く」意気込んでフライが割って入った。マスターは素知らぬ顔で、キャッシャーに向かっている。
 「俺はミッション系の幼稚園出身で」二人の顔を交互に見ながら、「クリスマス劇〝イエスさまのお誕生〟では主役」過去の栄光を語り出すフライ…「日曜学校も通った。クリスチャンホームだから、幼児洗礼さ」「お先に失礼、戸締まり頼む」

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