
放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)
第9章 先輩と傷跡
「いろ……、は……? っ、お前なにしてんだよ!!」
涙でぐちゃぐちゃな視界に映ったのは、先輩を殴り飛ばす澄くんの姿。
ソファから落ちて壁に体を叩きつけられた先輩は、「うう」と声を漏らしてうずくまっている。
澄くんはまるで信じられないものを見る目であたしのそばに近づいて、
「……色葉、なん……」
と、言葉を失った。
そんな澄くんを見て、自分の汚れを思い知った。
そんな目しないで。
うそでも、しないで……。
「うぅ……っ、見ないで……」
顔を背けて、嗚咽をもらす。
澄くんに、軽蔑された。
「……出てって。澄く……」
「行くわけないだろ!」
澄くんはあたしの腕に巻き付いたネクタイを外して床に投げ捨てた。
「色葉。もう大丈夫だから。ごめん……守れなくて」
混乱するようにあたしに声をかけつつ、服をなおしていく。
何で澄くんが謝るんだろうと少し引っかかって問おうとしたら、むくりと先輩が起き上がった。
「いってぇ……。なんなんだよ、またお前かよ」
服を直し、壁にぶつけた後ろ頭を片手でさする先輩は、澄くんのもとへ勝ち誇った顔で歩み寄る。
「どうせ今後は守れねーだろ? ひっこんでろよ。ちゃんと退学になれた?」
先輩が澄くんに問う。
どういうこと?退学?
まさか……
「先輩……嘘、ついたんですか……?」
いやらしいことすれば、動画のことを先生には黙ってるって……嘘だったの?
「えー? だってこいつがいる限りこうやって邪魔してくるに決まってんだから、チクって退学食らわせた方が手っ取り早いもん。今まで呼び出しくらってたんでしょ?」
……まさかもう、あの動画は先生に伝わったってこと……?
血の気が引いていく。
いまだ力の入らない体で澄くんに視線を向けると、澄くんはぎゅっとあたしを抱きしめた。
なんで否定しないの?
退学なの?うそだよね……?
