テキストサイズ

放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第11章 放課後の約束

「どうもー! 去年の卒業生でK大学法学部1年の吉田姫芽です! もうなくなっちゃったけど、高校では手品部にはいってましたぁー」



明るく弾む声は“手品部”って言った。


それって、もしかして……銀色の鍵をくれた相手なんじゃないの?


あの鍵を使って、ふたりはそこでなにを……。



慣れた手つきであたしに触れた澄くんを思い出す。



「二年生ってことはちょっと知り合いもいると思います! 態度がじじくさいからって“ひめじい”って呼んでくれちゃった人たち、あとですっぱい飴あげるから私のとこ来てね~」



ノリのいい声に、知り合いたちの楽しそうな声が飛ぶ。


「「ひめじぃー!」」



その声に、あたしが反応しそうになった。


……姫路っていうあたしの苗字に聞こえたから。



……“ふたりのときは名前で呼ぼ”


突然よみがえる澄くんの声。


あれは、もしかして


【二人の時は特別。だから色葉って呼ぶ】みたいな、そういう甘いものなんかじゃなくて……。



心臓が痛いほど動いている。



『姫路』って名前が、元カノとかぶるから……?





「法学部の勉強は、やっぱり六法を覚えないといけないんでほかの文系の学部より単位とるのがキツイ気がします! 夏休みには裁判とか見に行ったり、ちょっと体験できないことをするのは楽しいなーって思いますー」



「相変わらずお前の元カノ適当だな」


東くんが後ろを振り返って澄くんに言うと、


「……しらねーよ」


と顔を慌ててそむけた。


動揺してる……。



もしかして……元カノのことがまだ忘れられない、とか。



あ……そういえば、青井先輩を追い詰めるように言ってた言葉は、すごく法律に詳しかったっけ。



もしかして、まだ繋がってるのかな。



ドンドンつじつまが合っていく。


……じゃああたしって、澄くんにとってなんだったんだろう。



体育館をおもしろおかしく沸かせるマイク越しの明るい声を聞きながら、泣きたくなった。



……澄くんが好きだった人、今も好きかもしれない人は、こんなに眩しくてかっこよくて、あたしとは真逆で。


全部、……知りたくなかった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ