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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第12章 夏祭りと毒林檎

ふたりの真ん中に位置する林檎。


澄くんの赤い舌がそっと伸びる。


あたしも遅れて反対側をそっと舐めた。


「……」


つややかな林檎越しにちらりと視線がぶつかっては離れる。


ドキドキと心臓がけたたましい音を立てている。


――もし林檎あめがなければ。



あの唇とまたキスを交わせるのに。


舌を絡め合って、求めて、深く。


あのときみたいに触れられたい。


浸食されたい。


そういう目で澄くんを見てしまうあたしは、本当にはしたないと思う。


「……っ、はずかしいから……、あとはあげる」



顔をそむけたとき。


澄くんのぼうっとした瞳があたしを見つめた。



「……だめ」


ぷちゅっと唇にあめが触れた。



「ふたりで食べた方がおいしいから」



そう言い切った彼は頬を上気させるあたしにむけて意地悪に口角を上げる。


「……っ」


熱っぽい目に見つめられて、のぼせそうになっていく。


「ねぇ色葉……」


久々に聞こえた“色葉”に、ドクンと胸が鳴ってしまう。



――だけど。


「あ……」



ハッとしたように声を漏らし、あたしから林檎あめを遠ざけた彼は、ゴホンとひとつ咳払いして視線をそらした。


「いや、ごめん、姫路さん。残りは後で食べよ」



どうして、言い直すんだろう。


どうして一人で夢から覚めたみたいな顔するの?


「……うん」


唇についた甘い味が切なく胸にしみる。



いつの間にかあたしは、澄くんの隣で深く俯いていた。


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